開業への動機

『子供の結婚対策塾』開業への動機

このサイトを見てるお母さんへ聞きたいのですが、御自分の旦那さんは「高級なあてこすりの通じる男」ですか?

「午後の曳航」三島由紀夫・新潮文庫より引用

「今度は僕の話をしよう。正月の旅行で、僕は久しぶりに、毎日、朝から晩まで、おやじがおふくろと鼻を突き合わせていた。父親というものは!考えてもみろよ。あれは本当に反吐(へど)の出るような存在だ。あれは害悪そのもので、人間の醜さをみんな背負っているんだ。
 正しい父親なんてものはありえない。なぜって、父親という役割そのものが悪の形だからさ、厳格な父親も、甘い父親も、その中くらいの程のよい父親も、みんな同じくらい悪い。奴らは僕たちの人生の行く手に立ちふさがって、自分の劣等感だの、叶えられない望みだの、怨恨だの、自分が一生とうとう人には言えなかった負(ひ)け目だの、罪だの、甘ったるい夢だの、自分がとうとう従う勇気のなかった戒律だの、・・・・・そういう莫迦々々しいものを何もかも、息子に押しつけてやろうと身構えている。うちのパパみたいな一等無関心な父親だって例外じゃない。ふだんちっとも子供を構ってやれなかった良心の呵責を、結局子供から理解してもらいたがっている。
 このお正月、嵐山へ行って、渡月橋(とげつきょう)を渡りながら、僕はパパに訊(き)いたもんだ。
『パパ、人生の目的って一体あるんですか』
 わかるだろう。僕は実は、お父さん、あなたは一体何のために生きているんですか、いっそ早く消えてなくなったほうがお為(ため)でしょう、という意味で言ったんだ。しかしこんな高級なあてこすりの通じる男じゃない。彼はびっくりして、目を丸くして、僕をじろじろ見た。僕はこういう莫迦らしい大人の愕(おどろ)きがしんからきらいだ。とうとう彼はこう答えた。
『坊や、人生の目的というものは、人が与えてくれるもんじゃない。自分の力で作り出すんだよ』
 何て莫迦げた月並みな教訓だろう。そのとき彼は、父親の言うべき言葉の、いくつかの釦(ボタン)の一つを押したんだ。こういうときの父親の、あらゆる独創性を警戒する目つき、世界を一ぺんに狭くする目つきを見るがいい。父親というのは真実を隠蔽する機関で、子供に嘘を供給する機関で、それだけならまだしも、一番わるいことは、自分が人知れず真実を代表していると信じていることだ。
 父親はこの世界の蝿なんだ。あいつらはじっと狙っていて、僕たちの腐敗につけ込むんだ。あいつらは僕たちの母親と交わったことを、世界中にふれ廻る汚らしい蝿だ。僕たちの絶対の自由と絶対の能力を腐らせるためなら、あいつらは何でもする。あいつらの建てた不潔な町を守るために」

 高級な当てこすりの通じない父親は月並みな教訓しか語れません。下部に引用したロシアの文豪・ドストエフスキーのいうような恋愛で大切な「誠実さ」を教えることは難しいでしょう。人知れず真実を代表しているという信じ込みは我が子に絶対に備わっていたはずの「独創性」を奪って「自由」に好きな相手を選び、結婚する「能力」も腐らせます。・・・・・
 そして、このサイトを見ているお父さんへ聞きたいのですが、御自分の奥さんは気さくな母親でしたか?

「禁色」三島由紀夫・新潮文庫より引用

 康子は彼の意中の人が他にあるのだろうと忖度して月並みに悩んでいた。これは許嫁につきものの疑惑であったが、悠一は康子を愛していたという他はない。
 彼は今或る私立大学へ通っていた。慢性腎炎の母親と女中と三人ぐらしの、健全な没落家庭に在って、彼のつつましい孝心が、母親の悩みの種子だった。母親の知っている範囲でもこの美青年に思いを寄せている女は許嫁以外にも数多いのに、彼がまちがい一つ仕出かさないのを、彼女は自分の病身に対する思い遣りと経済的な顧慮からだと考えていた。
「私はそんな貧乏性にあんたを育てたつもりはないよ」とこの気さくな母親は言った。
「お父さまが生きていらしたらどんなにお嘆きになるだろう。お父さまは大学時代から女遊びに夜も日もなかったんだから。そのおかげで年配におなりになってからは、あれだけ落ち着きなすって私が助かったんだよ。あんたみたいに若いときに固い人は、却って年配になってから康子さんの苦労が思いやられるよ。お父さま譲りの女蕩(おんなたら)しの顔をしているくせに案外ね。お母さんにしてみれば一日も早く孫の顔を見たいだけなんだが、康子さんがいやならさっさと婚約を破棄するなりして、好きな人を自分で選んで連れて来たらいいでしょう。この人と決めるまでの目移りは、へまな真似さえしておくれでなければ、十人や二十人は結構ですよ。ただお母さんもこの病気でいつぽっくり行くかわからないから、少し早く結婚式へ漕ぎつけてね。男は堂々とやらなくちゃいけませんよ。お小遣いの心配なら、痩せても枯れても、喰べるに困らないだけのものはあるんだからね。今月はいつもの二倍上げるから、学校の本なんか買うんじゃないよ

 気さくな母親でなければ、異性に対して貧乏性になります。「学校の本」や「ドイツの挿絵入り道徳的教育の教科書」には以下の「誠実さ」も書かれていません。

「賭博者」第四章 ドストエフスキー・新潮文庫より引用

「あなたのご意見は、いったい何を根拠としているんです?」フランス人がたずねた。「根拠ですか、それはつまり、文明化された西欧人の美徳と徳性の基本的テーゼの中に、歴史的に、それもほとんどもっとも重要な項目として、資本を獲得する能力が含まれた、ってことですよ。ところが、ロシア人は資本を獲得する才がないばかりか、ただいたずらに、むちゃくちゃに浪費さえするんです。それでいながら、われわれ、ロシア人だって金は必要です」わたしは補足した。「したがってわれわれは、たとえばルーレットみたいに、二時間ほどで労せずしてふいに金持になることができるような方法を歓迎しますし、ひどく取りつかれやすいんです。こいつはわれわれには大きな誘惑ですからね。だけど、われわれは勝負もするのも、苦労せずに、ただいたずらにやってのけるから、負けるんですよ!」
「それはある程度正しいですね」フランス人がひとりよがりに指摘した。
「いや、それは間違っている。君は自分の祖国をそんなふうに批評して、よく恥ずかしくないね」きびしく、いさめるように、将軍が注意した。
「とんでもない」わたしは将軍に答えた。「だって、実際のところ、ロシア式のめちゃくちゃと、誠実な勤労によるドイツ式蓄財法と、いったいどっちが醜悪か、まだわからないでしょうに!
「なんてめちゃくちゃな考えだ!」将軍が叫んだ。
「実にロシア式な考えですな!」フランス人が叫んだ。
 わたしは声をあげて笑った。ひどく彼らを挑発してやりたかった。
「でも僕は、ドイツ式の偶像にひれ伏すくらいなら、むしろ一生キルギス人の天幕で放浪しつづけていたいですね」わたしは怒鳴った。
「何の偶像だって?」将軍がもはや真剣に怒りだしながら、怒鳴った。
「ドイツ式の蓄財法にですよ。僕はここに来て日が浅いけれど、それでもやはり、ここですでに気づいたり、確かめたりしたことが、僕の中のタタール人の血を憤怒させるんです。まったく、あんな美徳なんぞ、厭(いや)なこった!僕はここの周囲を昨日いちはやく十キロばかりまわってみたんですがね。いや、ドイツの挿絵入り道徳的教育の教科書と、寸分違わずそっくりですよ。ここでは、どこへ行っても、それぞれの家に、おそろしく行い正しい、並はずれて誠実な父親がいるんです。そばへ寄るのも畏れ多いほど、誠実な父親がね。そばへ寄るのも畏れ多いほど誠実な人間なんて、僕には耐えられませんよ。そういう父親の一人ひとりにそれぞれ家庭があって、毎晩みんなして声をあげて教訓的な書物を朗読するんです。こぢんまりした家の上では楡(にれ)や栗の木がざわざわと鳴っている。夕日と、屋根にとまったコウノトリ、何もかもが並はずれて詩的で、感動的なんだ・・・・・
 怒らないでくださいよ、将軍、もっと感動的な話をさせてください。僕自身だって、死んだ父親が小さな庭の菩提樹(ぼだいじゅ)の下で、毎晩、僕と母とにそういった本を朗読してくれたのをおぼえているんですから・・・・・だから僕自身、こういうことに関してはきちんと判断できるんです。ところで、ここのそういった家族はすべて、父親に完全に、隷属し、服従しているんです。みんなが去勢牛みたいに働き、みんながユダヤ人のように金をためている。で、かりに父親がもうある程度のグルデン貨幣をためたとなると、家業なり、ちっぽけな土地なりを譲るべく、長男を当てにするんです。そのために、娘は嫁入り支度もしてもらえず、いつまでもオールド・ミスでいることになる。そのためには、下の息子は奴隷奉公に売りとばされるか、兵隊にやられるかして、その金は一家の資本に繰りこまれる。実際、ここではそういうことが行われているんですよ。僕はいろいろたずねてみたんだけど、そうしたことすべてが行われるのも、誠実さゆえにほかならないんです。それも、自分が売りとばされたのは誠実さゆえにほかならないと、売られた下の息子まで信ずるくらい、強化された誠実さですよ・・・・・生贄(いけにえ)に曳かれてゆく犠牲自身が喜ぶなんて、これは理想じゃありませんか。

幸せそうな結婚式 お母さんは独身時代にデート中、そばへ寄るのも畏れ多いほど誠実な男に腹が立ちませんでしたか?・・・・・
 『人生の目的(結婚も)というものは、人が与えてくれるもんじゃない。自分の力で作り出すんだよ』なんて教訓からは「あなたは一体何のために生きているんですか、いっそ早く消えてなくなったほうがお為(ため)でしょう」とお母さんに対しても考える若者も増えて家庭は壊れたり、人付き合いもできなくなるはずです。
 自分の子供に月並みな教訓ばかり語る親が増えているので、判で押したように結婚できない若者が増え続けるのではないでしょうか。・・・・・
 1999年に私は日本で初めて婚活セミナーを開業しましたが、当時と同じようにこのような社会的問題や課題と向き合いたくて開業しました。

※老婆心ながら書きますが、歴史の終わりを告知したイデオローグ・三島由紀夫が書いた「午後の曳航」は14歳未満の6人の子供たちが父親になる男に青酸カリを飲ませて終わります。講師を兼任する塾長・草加大介が過去に衝撃を受けた作品の一つです。

「子供の結婚対策塾」における講義の参考文献

詫摩武俊『性格はいかにつくられるか』岩波新書・『好きと嫌いの心理学』岩波新書
宮城音弥『新・心理学入門』岩波新書・『愛と憎しみ』岩波新書・『精神分析入門』岩波新書・『天才』岩波新書・『性格』岩波新書・『人間性の心理学』岩波新書
南博『社会心理学入門』岩波新書・『日本的自我』岩波新書・『日本人の心理』岩波新書
三島由紀夫『不道徳教育講座』角川文庫・『行動学入門』文春文庫・『若きサムライのために』文春文庫・『葉隠入門』新潮文庫
加藤諦三『「思いやり」の心理』PHP文庫・『「やさしさ」と「冷たさ」の心理』PHP文庫・『偽りの愛・真実の愛』PHP文庫・『終わる愛 終わらない愛』PHP文庫
高木貞敬『記憶のメカニズム』岩波新書
波多野完治『子どもの認識と感情』岩波新書
相良守次『欲求の心理』岩波新書
霜山徳爾『人間の限界』岩波新書
河合準雄『コンプレックス』岩波新書
牧康夫『フロイトの方法』岩波新書
島崎俊樹『感情の世界』岩波新書
田中克彦『ことばと国家』岩波新書
笠原嘉『退却神経症』講談社現代新書
相場均『うその心理学』講談社現代新書
大木幸介『感情はいかにしてつくられるか』講談社現代新書
伊藤順康『自己変革の心理学』講談社現代新書
早坂泰次郎『人間関係の心理学』講談社現代新書
森省二『別れの深層心理』講談社現代新書
今道友信『美について』講談社現代新書
山元大輔『脳の記憶と謎』講談社現代新書
伊藤勝彦『愛の思想史』講談社学術文庫
小此木啓吾『フロイト』講談社学術文庫
土井健郎『精神分析』講談社学術文庫
河合準雄『無意識の構造』中公新書
相場均『性格』中公新書
丸田俊彦『痛みの心理学』中公新書
小此木啓吾『対象喪失』中公新書
春日武彦『不幸になりたがる人たち』文春新書
信田さよ子『依存症』文春新書
橋本治『人はなぜ「美しい」がわかるのか』ちくま新書
福島章『ストーカーの心理学』PHP新書
和田秀樹『あなたはシゾフレ人間かメランコ人間か』新講社
國分康孝『結婚の心理』三笠書房 知的生き方文庫
南博『初歩心理学』光文社
小此木啓吾『ジゾイド人間』ちくま学芸文庫
スタンダール『恋愛論』新潮文庫
曽野綾子『誰のために愛するか(全)』文春文庫
小此木啓吾『家庭のない家族の時代』ちくま文庫
秋山さと子『夢で自分がわかる本』PHP文庫
C・ウィークス『不安のメカニズム』講談社ブルーバックス
岸田秀『続ものぐさ精神分析』中公文庫
M・モスカトー/J・ヴィットヴェール『ことばの心理学』白水社
西部邁『国民の道徳』産経新聞社

※以下のYouTubeで草加大介との対談に登場する結婚相談所の女性は、この塾の支援者も務めています。
https://www.youtube.com/watch?v=i_p88KmDS5I